不安障害

不安障害について

不安障害は最もよくみられる精神疾患の1つですが、不安は全ての人が体験する不快であいまいな憂慮の感覚で、しばしば頭痛や発汗、動悸、胃部不快感などを伴います。こうした不安を体験するだけで病的とはいえませんが、状況にそぐわないほど強いものになると病的と評価されます。ここではパニック障害について詳しく記載します。

パニック障害の疫学

パニック障害の生涯有病率は1~4%の範囲で、平均発病年齢はおおよそ25歳とされていますが、あらゆる年齢でみられます。うつ病や他の不安障害、強迫性障害、PTSDの併発も多いです。

パニック障害の原因

神経伝達物質の1つであるセロトニン系の機能異常、二酸化炭素に対する高い感受性、乳酸代謝異常などの生物学的要因や遺伝要因、生活上のストレス性の出来事という心理社会的要因の関与が考えられています。

パニック障害の診断

繰り返される予期しないパニック発作が診断に必要です。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内にピークに達し、その時間内に動悸、発汗、震え、息苦しさ、胸の痛み、吐き気、めまいなどが起きるものです。パニック発作=パニック障害ではありません。パニック発作自体は社交不安障害、PTSDなど、パニック障害ではない他の精神疾患や、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患でも起こり得ます。

パニック障害の治療

抗うつ薬でもある選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やベンゾジアゼピン系抗不安薬による薬物療法に、曝露反応妨害法という認知行動療法を組み合わせていきます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬による治療は、即効性があるため治療開始直後の患者様の満足度は非常に高いのですが、長期間の服用による依存性、耐性形成の問題に加え、曝露反応妨害法に対する治療意欲を削いでしまいがちです。一方で、暴露反応妨害法はシンプルかつ効果的な治療法です。「精神科に悩みを相談しに来ているのに、どうして辛い治療を受けなければならないのか」とお考えになるかもしれません。そのお気持ちはもっともなのですが、身体の治療が種々の検査や手術などでお辛いように、精神科の治療においても時として辛い治療に取り組んだ方がいい場合もあります。無理のない範囲で一緒に取り組んでいきましょう。

その他の不安障害

社交不安障害

人前で話す、他人の前で字を書く、レストランで食事をするといった他者から観察される可能性のある状況において、自分の振る舞いが他者から否定的な評価を受け、恥ずかしい思いをするのではないかという著しい恐怖が生じる疾患です。恐怖が公衆の面前で話したり動作をしたりすることに限定される、パフォーマンス限局型という病型もあります。

全般性不安障害

特定の状況に対して不安が生じる訳ではなく、学校や仕事、健康など、生活全般のことが気になり、過剰な不安が起こる日の方が起こらない日より多い状態が、少なくとも6か月間持続する疾患です。落ち着きがない、疲れやすい、集中できない、イライラする、筋肉が緊張する、眠れないといった症状も伴います。いずれの病気も治療はパニック障害に準じます。呼吸法や漸進的筋弛緩法といったリラクゼーション法も症状の軽減に有効です。
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